パワーハラスメント防止対策として事業主が行うこと

法改正

令和4年4月1日から中小企業にもパワーハラスメント防止対策が義務付けられます。会社はパワーハラスメントに対し、いったい何をしなければならないのでしょうか。まずは法律ではどのように規定されているのか、確認してみましょう。

労働施策総合推進法

第30条の2 事業主は職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない

2.事業主は労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない。

第1項の赤字部分をご覧下さい。事業主には「雇用管理上必要な措置を講ずる」という義務があります。措置の内容は指針において定められています。今日はこのパワーハラスメント指針に定められている【措置】についてポイントをご紹介します。

なお、セクシュアルハラスメントにもマタニティハラスメントにも同様の指針があり、同様の事業主の措置義務があります。パワーハラスメント対策だけではなく、様々なハラスメントを防ぐための総合対策として取り組む必要があります。それでは、これらの内容をみてみましょう。

1.労働者への周知・啓発

事業主はまずハラスメントについての理解を労働者に啓発する必要があります。ハラスメントとはどのようなものなのか、発生の原因はなにか、まずこれがわからなければ対策のしようがありません。リーフレットを渡して「読んでおいて」だけでは不十分です。確実にハラスメントの理解を深めるために、ハラスメント研修などを行う事はとても有効です。当事務所でも一番ご依頼の多い研修項目はハラスメント研修です。以前インフォメーション社内研修のおすすめ【ハラスメント対策】でご紹介していますので、参考にしてください。そしてそのうえで、ハラスメントを行ってはならないという会社の基本方針を明確にして、ハラスメントを行った場合には厳正に対処することを労働者に周知します。もちろん就業規則にハラスメントに関わる条文が必要です。なによりもまず、【ハラスメントを起こさない】つまり予防が大事です。

2.相談体制の整備

ハラスメントについての相談窓口を設置します。「窓口なら、セクハラのときに設置した」という企業も多いと思います。しかし、ただ設置してあるだけではNGです。相談窓口があることを労働者は知っていますか?相談がきたら相談窓口担当者はすぐ対処できますか?その後のフォロー体制は決めてありますか?ハラスメントの相談窓口は実質を伴っていなければ意味がありません。また、相談窓口担当者が適切に対応きるような研修なども必要となるでしょう。勝手に結論を決めつけない、相手の心に寄り添った傾聴を心掛ける、プライバシーへの配慮も重要です。相談者は行為者の報復を恐れて全てを話せる状況ではないかもしれません。相談しやすい環境を作り、相談者と相談窓口担当者との信頼関係を構築することが必要です。この相談窓口の最初の行動がとても重要となります。

3.事後の迅速かつ適切な対応

一番よくないのは【相談があったのにもかかわらず放置する】ことです。ハラスメントの相談を受けたら、迅速かつ適切に事実確認を行います。相談者(被害者)と行為者で主張が異なることも多いので、プライバシーに配慮しながら第3者や周囲の労働者にも協力を仰ぐ必要もでてくるかもしれません。そして調査内容を元に、社内でハラスメントの事実があったのか否かを速やかに検討し、ハラスメントの事実が判明した場合には、被害者に対して適正に配慮の措置を講じると共に、行為者に対しては公正な判断により懲戒処分または配置転換などの措置を講じます。もしもハラスメントの事実が確認できてしまったり、疑わしい事例が発生した場合には、今までの対応について見直し、再発防止策を検討してみましょう。

4.プライバシーの保護と不利益取扱いの禁止

既に何度も出てきていることですが、ハラスメントに対応する場合に重要なのはプライバシーへの配慮です。誰にも知られたくないことを相談している場合が多いのです。相談窓口担当者や被害者から相談を受けた職場の同僚が相談内容などを他人に漏らすこと(アウティング)により、二次被害を引き起こすこともあります。私がハラスメント研修で良くお話することなのですが、相談された内容を黙っていられない人は軽々しく相談を受けないことです。このように相談窓口担当者はとても重要です。社内で対応が難しい場合には、第三者の外部機関を相談窓口にするという方法もあります。そして相談した事や調査に協力したことをもって解雇等の不利益な取り扱いを受けることは無いことを労働者に周知することが必要です。

最後に

ハラスメントに関する事業主の措置義務について簡単にポイントをお話しました。ここでは書けなかったハラスメントごとの対応の違いや、義務では無いものの、ハラスメント防止に有効な望ましい取り組みなど、より詳しく措置義務の内容を知りたい方は、厚生労働省の職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!をご覧下さい。ハラスメント対策は形式だけでは意味が無いという事を忘れずに施行前には社内体制を整えるよう準備を進めてください。

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