「年金事務所の定時決定時調査」とは~算定基礎届が届く頃ご注意を

手続

今年も算定基礎届が届く時期ですが、提出(定時決定)時に年金事務所が調査を行っているのをご存知ですか?4年に1度ランダムで選ばれた事業所が調査されるのですが、社会保険に加入して初めて定時決定を行う事業所は必ず調査されます。「初めてやるのにいきなり調査?!」と、不安になるのも無理ありません。そして、「今年は調査対象じゃないからいいやー」という事業所様。この調査は一回きりではありません。順番は必ず回ってきます。

算定基礎届に関する書類は社会保険に加入している全ての事業所に届きます。届いたら必ず開封して中身を確認してください。
定時決定時調査に選ばれた事業所には算定基礎届の封筒とは別に通知書が届きます。しかし年金事務所によっては算定基礎届と同封の場合もあります。

今回は、年金事務所調査の目的や注意点をまとめてお伝えします。調査と聞いただけでアレルギー反応を起こす方がいらっしゃいますが、日頃から正しく処理・手続していれば何も心配することはありません。しかし、正しい処理・手続を行う為には正しい社会保険の知識が必要です。少しでも不安があったら社労士にご相談ください。社労士はこのような社会保険や労働保険手続の書類作成・提出代行ができる唯一の士業なのです。

定時決定ってそもそも何?

定時決定とは、過去の報酬(社会保険に加入した際の報酬または昨年の定時決定時の報酬)と現在の報酬に乖離が無いか調べるために行うものです。毎年4月から6月の3か月分の給与を平均して年金事務所(組合健保)に算定基礎届を提出します。お給料が上がり2等級以上の差が出た場合には【随時改定(月額変更)】を行いますが、随時改定に該当しない方でも定時決定において1等級でも差があれば今年の9月から等級が変わります。そしてお給料は上がっていないけれども残業代が増加した!という場合にも定時決定で9月から等級変更となります。

定時決定や随時改定については色々な状況が考えられます(休職者は?病気で10日休んじゃった場合は?アルバイトから正社員になったら?etc…)ので、ここで全ての書き方をご紹介することは難しい(それにすごく長くなってしまいます)ので社労士にご相談ください。

定時決定時の年金事務所調査ってどんなことを調べられるの?

調査担当者がチェックする主要項目をあげてみます。

社会保険の加入漏れが無いかどうか

一番厳しくチェックされるのは社会保険加入漏れの有無です。パート・アルバイトで社会保険の対象になっているのに未加入の人や年金が減らされるからと社会保険の資格を喪失したのにも関わらず普通の社員のような働き方をしている人がいたら要注意です。調査時には7月1日現在在職している全ての従業員(役員も入ります)の賃金台帳を持参します。特に平成28年10月から500名以上の被保険者がいる企業は社会保険の適用が拡大されますので、このあたりが要チェック項目です。詳しくは厚生労働省の短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の適用拡大についてのリーフレット短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集でご確認ください。

また、もう一つご注意いただきたいのが、社会保険の対象となった日に資格を取得しているかという点。試用期間中だからといって従業員を社保に加入させないのはNGです。

対象となる報酬は正しく算入しているか

基本給だけが定時決定に関わる報酬ではありません。各種手当も労働の対象として支払われるのであれば含みます。通勤手当にもご注意ください。逆に、報酬に含まないものとは、一般的に事業主が恩恵的に支払ったもの(見舞金等)や臨時に支払ったもの(大入り袋等)などです。

もう一つご注意いただきたいのが遡り支給した報酬がある場合です。過去の遡り分を含んで3ヶ月の平均を出したらとっても高額になってしまった!なんて事のないように、このような場合には遡り分を除いて3ヶ月平均を算出する【修正平均】という算出方法をとります。

随時改定(月額変更)漏れは無いか

随時改定とは、お給料が変更になった月から3ヶ月平均を出し2等級以上の差があった場合に行う処理のことです。4月に昇給する場合はまだわかりやすいのですが、ご注意いただきたいのは年度の途中で役職が変わったりして手当額が変更になった場合です。担当者が処理を忘れており、該当する従業員も保険料が上がるのが嫌なので何も言わない・・・こんなことが無いかどうか、調査では過去の賃金台帳を調べられます。

対象となる給与支払基礎日数は正しく記入しているか(そもそも算定基礎届がきちんと記入されているか)

常勤者については算定基礎の対象となるお給料の支払基礎日数は17日以上あることが求められます。欠勤が多い月は除いて算出します。(休業者や休職者は従前の等級で書類作成をします)しかしパート・アルバイトは時給制であることが多く、常勤者と同様のお給料の支払基礎日数を使うと算定が正しくできないことがありますので下記の算定方法で決定します。

パート・アルバイトの支払基礎日数(4月、5月、6月の3ヶ月)による算定方法

支払基礎日数 算定方法
1ヶ月でも17日以上ある 17日以上ある月の報酬月額の平均で決定
3ヶ月いずれも15日以上17日未満 3ヶ月の報酬月額の平均で決定
1ヶ月は15日未満、
2ヶ月は15日以上17日未満
15日未満の月を除く
2ヶ月の報酬月額の平均で決定
3ヶ月いずれも15日未満 従前の標準報酬月額で決定

なんて複雑なんでしょう!ポイントは17日以上があればその月を使い、15日未満は使わないといったところでしょうか。

年金事務所の調査で用意する書類は?

  • 労働者名簿(東京都の事業所は不要、代わりに社保未加入者全員分の直近の雇用契約書を用意)
  • 賃金台帳
  • 出勤簿(賃金台帳で出勤日などが分かれば不要)
  • 源泉所得税納付書の写し

上記の他にも、管轄の年金事務所や年度によって用意する書類は変わってきますので、年金事務所調査の通知書の案内を必ず確認してください。(※書類にマイナンバーを印字しないように注意してくださいね!)

年金事務所から修正の指摘があった場合、会社も従業員も遡って保険料を納付することに!

加入者漏れ指摘の場合には、最悪の場合2年遡って加入しなおし!なんてこともあります。従業員も会社(両方ですよ!)も2年分の保険料を納めるなんて大変な金額になってしまいます。そしてこれだけではありません。遡りの間に病院で国民健康保険の保険証を使用していたとすると、これも実は違っていたということになり、過去の医療費を一旦全額負担し(3割じゃありません、10割です!)新たな健康保険の保険者(年金事務所や健保組合)に療養費と言う形で7割請求することになります。入院や手術があったらすごい金額です。また随時改定漏れについても該当月に遡って保険料が徴収されますのでご注意ください。

年金事務所の調査は拒否できるの?無視していい?

年金事務所調査は拒否できません。無視していても後日連絡があります。知りませんでしたーというのも通りません。居留守を使ったりし続けていると年金事務所から調査員が訪れます。それも無視すると「悪質な事業所」とみなされ強制調査の対象となります。よく会社と社長を書類送検!なんてニュースがありますが、どの事業所も指導を無視したりして悪質だとみなされるケースなんです。知らんぷりは絶対に避けてください。指定された日時に行けない場合には事前に連絡して日付を変えてもらいましょう。

年金事務所調査を無事に乗り切るためには

年金事務所調査対策の第一歩は、日頃から正しく手続を行うことです。そして正しい社会保険の知識をつけることが大事。「こんな感じかなー?」で書類を作成しないこと。少しでも不安があったら社労士にご相談ください。このような社会保険や労働保険手続の書類作成・提出代行ができるのは実は社会保険・労働保険の専門家である社労士だけなんです。「今までの自分の処理が正しかったのかチェックして欲しい!」という方も「調査対象になってしまったので記載内容を確認して欲しい!」と言う方もご相談ください。THE STAR社労士事務所ではスポット対応もしておりますのでご相談ください。なにごとも早目の対応が大事なんです。

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